愛することと愛されること

 

10歳 僕はいじめられっ子だった。
僕はクラスメートにいつも殴られ蹴られていた。
だから僕は僕をいじめたクラスメートを憎んだ。
その憎しみはひとつの確信に変わった。

この世界を支配する原理はただひとつ、
虐げることと虐げられること、
それだけだということを。


20歳 僕は必死で勉強した。
勉強に勉強を重ねて偉くなれば
虐げる側の人間の仲間に入れるだろうと思ったからだ。
僕は頭が痛くなるまで勉強し
そして自分だけの密室に閉じこもった。

そんなある日 突然密室のドアが開いた。
突然、本当に突然、あなたが密室のドアの前に立っていたのだ。
あなたは白いワンピースを着てきらきらと光輝いていた。

そしてあなたは言った。

「あなたに足りないもの、それをわたしが差し上げましょう。」

僕はその言葉の意味が全然わからなかった。
僕はあなたに愚弄されたと思った。
だから僕はあなたを殴りつけた。
憎しみを込めた拳をあなたの顔面に叩き込んだ。
あなたは序序に動かなくなった。


30歳 今僕はあなたの言葉に意味がなんとなくわかる。
僕はあなたに愛されたんだ。

そのことにきずいた時、僕は泣いていた。
小高い丘の上にあなたの墓碑銘を僕は造った。


40歳 僕はもうはっきりと確信している。
この世界を支配する原理は虐げることと虐げられることだけじゃない。
もっと深くもっと大きな原理がある。

それは愛することと愛されることだ。

僕はこれから人間を愛することだろう。
なんどでも なんどでも あなたにめぐり合うために
僕は愛することを止めないだろう。

 

(決定稿2003年3月15日)