『詩画集 ハレルヤ 耽』

 

   

ジョルジュ・バタイユ原著。出口裕弘訳。福地靖銅版画。1969年5月1日発行(初版)。限定30部発行。シロタ画廊発行。未綴り彩色銅版画6枚(サイン&ナンバーが鉛筆で書き入れてある)に文章の紙6枚が貼り付けてある。「出口裕弘訳」とのみ書かれた扉のページ1枚と奥付けのページ1枚で合計14枚の紙片が青いタトウに収まる。そのタトウが夫婦箱仕立ての桐箱に入り、最後に輸送箱に収納されて完本。大判。定価30000円。 

 「一度見たらあまりのショックに忘れられない」と評されるほど有名な、新潮文庫刊行のスティーブン・キング著『キャリー』のカバー絵を描いた銅版画家&福地靖氏の唯一の詩画集が本書である。
 
 出口裕弘によるジョルジュ・バタイユの訳詩篇と銅版画家である福地靖氏の版画がピッタリとシンクロした極めて好印象な詩画集に仕上がっている。
 本書が発行された1969年といえば、サバト館によるジョルジュ・バタイユの小説群の訳業もまた始まっていない時期であったので、ジョルジュ・バタイユの日本国における受容としては本書が最初期のものであったと推測される。
 筆者としては1980年代の後半からバブル期に於いて始まった「幻想文学ブーム」に於いて高値で取引された本とこの『詩画集 ハレルヤ 耽』は確実に違う位相に立つ本であると推測する。出口裕弘による本書の訳文は「怪奇」か「幻想」か?と問われれば、確実に幻想より「怪奇」の側に揺れる作風で思われる。さらにゾンビ映画の巨匠&ルチオ・フルチの映画に出てくるような「瞳孔の無い少女」を執拗に描き続ける福地靖氏もまた紛れも無い「怪奇の血」の持ち主であると筆者は断言する。本書に於けるバタイユの印象は仏蘭西流のシュールレアリストというより、英米系のH・P・ラブクラフト&スティーブン・キング&クライヴ・バーカーらの「コズミック・ホラー」と呼ばれる作品群の書き手に近い感性が感じられる。
 日本流「幻想文学」の大流行に微(かす)かな痛痒を感じていた筆者としては、この『詩画集 ハレルヤ 耽』という作品集の持つ独特の個性にこころから喝采を送るものである。

 本書の古書価については、2017年の七夕大市に於いて本書が10万円スタートで出品された。筆者は幸運にも10万円より安く本書を入手していたのであるが、本書の古書価は今後も10万円前後をキープしてゆくだろう。それほど筆者は本書をシロタ画廊初期の傑作として高く評価する。

 さて本書はたった30部しか発行されなかった本なので、本書の「完本」を入手することは、これからますます困難になってゆくことだろう。本書の持つ独特の個性が気に入った方は一刻も早くのご入手をお勧めする。

 最後に本書は非常に傷みやすい桐箱に入っているので、本書の物理的保護の観点から迷わず輸送箱入りの完本の入手が好ましいと思われる。

  

 (2017年8月9日&黒猫館&黒猫館館長)