部屋を飾る

(2012年1月6日)

 

 

(↑最近、流行しているアルフォンスイノウエの版画) 

 



 長年、殺風景な部屋に住んできたものだとつくづく思う。

 散乱した本。
 袋・チラシ・新聞など雑多な紙類。
 バナナの皮。
 飲みかけの缶ジュース。

 「散らかった部屋にいると心まですさんでくる。」

 なにかの本でそんな記事を読んでからなるべく部屋の掃除を心がけることにした。
 最近、流行の「断舎利」ではないが必要があるものは残す、必要がないものは、ばっさりと売り払った。

 すると不思議や不思議、以前より精神状態が穏やかになったのだから、不思議な効果である。部屋が整理されると心が整理させるということだろうか。

 しかし「がらんとした部屋」にひとりぼつねんと坐っいるのもなんとも寂しい。 なにか飾りたい。

 というわけで。

 まず花を花瓶に飾った。しかしいつ花瓶が転がるかわからない。やはり水物は駄目だ。

 次にフィギュアを飾った。しかしこういう立体物というものは置き場所がないと映えない。

 次に作家の色紙を飾った。しかし文字だけというのもあまりに渋すぎる。

 というわけで壁に版画を飾ることにした。壁にかけるならポスターでもいいじゃないか、といわれそうだが、わたしとて昔はアニメやホラー映画のポスターをべた
べた壁に画鋲で貼り付けていた時期がある。
 しかしもう、そういうものは趣味に合わなくなった。だから版画をかけるのである。

 版画は一点ものである肉筆画とは違って50枚〜100枚ぐらいの単位で刷られる。一点ものである肉筆画の値段は目玉が飛び出るほど高いが版画はそれほどではない。

 版画なら安いものなら3000円程度で入手できる。額装代は2000円程度だから最低予算は5000円程度で版画を飾ることは可能だ。

 しかしあまりに安い版画は「贋物」が多い。ここら辺のことは骨董の基本事項なので詳しくは説明しない。

 版画は「絵師」「掘り師」「刷り師」の三者の連携プレイによってできる極めて完成まで手間のかかるものだ。しかしそのぶん、人間の「暖かみ」というものが
伝わってくる。大量生産のポスターでは絶対得られない「味」だ。

 昨今の古書の世界の流行では幻想文学書肆の「サバト館」の影響で生田耕作のお抱え絵師であった山本六三やアルフォンス井上の版画が人気を集めているらしい。
 このレヴェルの版画家の作品なら安すぎず、高すぎず、版画入門としてなら手ごろな所である。



 さて版画を一枚飾ったら部屋がぐんと落ち着き、かつ華やかになった。素晴らしい効果だと思う。

 さて版画を飾ることに限らず、「自分の部屋」というものは「ネグラ」であると同時に「自分を癒す場所」 なのだ。故に自分の部屋を飾るということは極めて重要な行為だ。
 「自分の部屋」で鋭気を養い、外へ飛び出してゆく。これは極めて健康な人間の姿である。

 さてこの日記を読んでいる諸君、部屋が散らかっていないかな?そうだとしたらまず掃除することをお薦めする。そうすればより快適な生活が得られる。これは間違いない。

 そして余裕があったら版画でもオブジェでも善いからなにか飾ってみることをお勧めするものである。


(了)

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)