黒い海のムコウへ

(2010年6月19日)

 

 

 

 

黒い海のムコウにはいったいなにがあるというのだろう。



何もないというのなら僕はただ海にかえりたい。

誰にも知られずに、誰にも気づかれずに、僕はひとりでひっそりと

帰りたいよ 産まれてきた黒い海の底へ。

塵にかえるんだ。

もう誰に何度も叩かれても蹴られても痛くない

海の藻屑になりたいんだ。



にんげんはプランクトンから進化して陸にあがり、

文明を築き、宇宙を目指す。



だけど僕はもう疲れたよ。

海へ帰るんだ。
産まれてきた黒い海へ。



だけどもしも、

黒い海のムコウになにかあるというのなら、

たどり着いてみたい。

疲れきった四肢を投げ出して、

ムコウ側の海辺に寝そべってみたい。



「ここは死の国なの?

それともまだ悪夢は続いてるの?」



そんなムコウ側にもしもなにかあるのなら、

僕はこのどろどろの海を泣きながら泳いでゆこう。



それが僕の最後の賭けだ。

たどり着いて見たいよ。



黒い海、虚無を、絶望を、泪を、

闇のまた闇を超えて。



見てみたいんだ。

 

(黒猫館&黒猫館館長)