転生前夜

京都てるくはのる事件・殺人者 岡村浩昌のために

 

生まれ変われ 生き直せ。
私は今夜、お前だけに転生を命ずる。


お前は1999年12月21日のある晴れた日に
ナイフで小学2年生の全身をめった刺しにして殺した。

そしてお前は警官たちに追われ
ビルの屋上から飛び降りて死んだ。
21歳だった。

お前は法の裁きを受けなければならなかった。
お前はマスコミの格好の生贄として吊るされなくてはならなかった。

しかし、ゆめゆめ間違うな!
私はお前を憎んでいるのではない!

お前が殺した小学生のためにも私はお前に命ずる。
刑を受けよ!罰を受けよ!そしてもがき苦しめ!

お前の苦しみの涙が一粒こぼれるごとに
お前はお前のどす黒い罪の穢れを
少しずつ、ほんの少しずつだが清めてゆくのがわからないのか?

修羅場の、地獄の、闇の果て、その果てしない彼方に
ほのくらい希望の光がちらついているのがわからないのか?

散り散りになって、さすらいゆくお前の家族が
いつの日か、遠い未来の異国の果てで、
必ずや再会することがお前にはわからないのか?

そしていつの日かお前は見出すであろう。
お前が命を賭けても守らねばならぬ
大切な人とめぐり合う、そのすがすがしい朝を。


お前は死んだ。
しかしお前が殺した小学生が、
お前が虚無へと溶暗してゆくのを
さえぎるであろう。

しかしそれは復讐ではない。
お前は宇宙の摂理によってそう定められているのだ。

ならばお前よ。お前は浮遊霊となって
永遠に幽冥境を漂うことを選ぶのか?

それはお前の本意ではない。
わかっている!そんなことは十二分にわかっている!

だからこそ今、私はお前に厳しく命令する。

生まれ変われ!生き直せ!
死すらも越えて、お前はもう一度、今生の生をまっとうし
生病老死の苦痛に耐えろ!

そのことによって、お前は本当に生きた証として
本当の死を受け取ることができるのだ。
もう二度と転生することのない安らかな死を。

すべてはお前のため、私はお前の見方だ。

私は赦そう。お前の苦痛に免じて。
お前は耐えろ。私の祈りに誓って。


生まれ変われ。生き直せ。
私は今夜、お前だけに転生を認める。

初稿2000年2月6日
決定稿2002年4月21日

 

darker than darkness