怒れ、ジャミラよ

 

(実相寺昭雄氏没の夜に)

 

 

ひび割れた
異形の身体。


首が無く
頭が胴体にめり込んでいる。
まるで子供のような短い足。


ウルトラ水流などという
ふざけた必殺技で、
無残に殺されたおまえ。



おまえは人間を憎んだろうか。



「怪獣図鑑」に載せられ、
今日も子供は「ジャミラごっこ」に夢中だ。




おまえのために墓は要らぬ。
瞑目するな。
眼を開け。
そして。
人間を襲え。



人間の犯し続ける限りのない罪を。
今日もまた地球のどこかで殺し合いが起き
おまえのように抹殺されてゆく無数の無垢。



おまえを視る時人間はギョッと眼を見張る。
死んだ魚のように大きく萎んだ眼で。
それはおまえが異形だからではなく
おまえの眼の中に保存される同胞を視た驚異だ。



おまえはひび割れた鏡。
そのぎざぎざのカケラで人間の皮膚を切り裂け。



人間は永遠におまえに呪われ続ける。
そのひび割れた身体を剥きだしにして
明日も「怪獣」として怒り続けよ。



わたしは決しておまえを人間とは呼ばない。
怪獣・ジャミラとして永劫に地球に飛来し続けよ!



あくまで異形として。
驚異として。
悪意として。
永遠の裁きとして。



怒れ。
ジャミラよ。

 

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)