ニルヴァーナ

(切望の夜に捧ぐ)

 

 

鞭を ください。
苦しみを ください。
傷痕を ください。

貴方の 鞭で
私に 自分を捨てる歓びを 教えてください。

華美に着飾って 微笑を浮かべたのは
自分自身が 恐かったから。

いつも口をつぐみ いつわりの言葉を 吐いたのは
こころを傷つけられたくなかったから。

人に出会うと すぐに壁を造ったのは
自己愛を 見破られたくなかったから。

鞭を ください。
苦しみを ください。
そして罰してください。

なにも知らないほどに ひとを傷つけてしまう私に
人の世の苦しみを 分け与えてください。
 
 (でも 貴方に出会って 私は変わった。
 貴方の瞳を通して 世界が見える。
 だから せめて 私の最期のわがままを
 許して ください。)

貴方の悲しみ それはすべて 私の 罪だから。

黒い月蝕浮かぶ 今宵。
私は身も心も 裸に なって
生贄の祭壇に 登ります。

そこで 貴方と 貴方の瞳をとおして
浮かび上がる世界のために

私を 静かに 殺して ください。

  

 

 

(この作品の初稿は館長夫人・影姫によって某大手SMサイトに投稿された。)
(今回、黒猫館館長が影姫にアドヴァイスを与えこの「決定稿」が誕生した。)
(決定稿・2006年2月16日)