森開社

 海外文学専門(主にフランス文学)の出版書肆。創立は1970年代。その作品のセレクトには社長の小野氏のこだわりがかんじられる。また装丁も一冊一冊実に凝っている。似た装丁で統一感を出そうという発想が全くないところに共感できる。概して出ない本が多く、完揃えはかなり難しいだろう。古書価も高い。

 

 

『白書』

ジャン・コクトー著。江口清訳。

1976年9月25日初版発行。限定400部。ちつ・外ちつ付き完本。この本が森開社第一回出版物らしい。この本は以外と出易い。古書価は8000円前後か?外ちつが痛んでいたり、陽に焼けたりしている本が多いので、通信販売ではなく、実際店頭で手に取ってじっくり見てから買うのが好ましい。注意!外ちつの紐が取れている本が多いです!

 

 

 

『ステファーヌ』

ジュール・ラフォルグ著。志村信英訳。

1976年12月10日初版発行。限定1000部。函完本。1000部も出ているわりになぜかでてこないのが本書。根気で探すしかない。古書価は5000円程度か?注意!カバー付きの異装本も存在します。当然、「函版」のほうが珍重される。しかし完揃えしたい人はカバー版も買わねばなるまいだろう。 

 

 

  

『青き眼の半獣神』

アルベール・サマン著。志村信英訳。

1976年8月20日初版発行。限定500部。函完本。社長自ら「これはいい本なんだ。」と力説しているだけあって人気のある本である。当然、ほとんど出ない。古書価は10000〜18000円程度か? 

  

 

 

『ユイスマンスの墓のうえで』

レオン・ブロア著。田辺貞之助訳。

1977年9月30日初版発行。限定491部記番。ビニカバ完本。この本はどういうわけか、よくでてくる。人気がないのだろうか?筆者はこの本の装丁は結構気にいっているのだが。古書価も5000円前後と手ごろ。いつでも買えるので初心者の人はそう急いで買う必要もないだろう。 

 

 

 

『少年十字軍』

マルセル・シュウォッブ著。多田智満子訳。

1978年2月5日初版千部発行。フランス装・元パラ完本。この本の入手難易度は中程度。一年も探せば出てくるだろう。古書価は5000円〜一万円程度。コーべブックスから異訳本『小児十字軍』が出ているが、筆者は森開社版のほうが断然好きである。多田智満子氏による訳も優れている。装丁も内容に見合って実に瀟洒。森開社本のなかでもベストの部類にはいる傑作本ではなかろうか?お薦めです! 

 

 

 

『女友達』

ポール・ヴェルレーヌ著。窪田般弥訳

1974年5月30日初版発行。限定800部。フランス装、ダンボール製ちつ・函付き完本。以外と出ない。この本はフランスで発禁をくらったらしいので、そういうところが人気の原因だろうか?古書価は5000円程度と手ごろ。しかしダンボール製の函はあまり見栄えがよくない。 

 

 

『ボードレールの墓』

 ピエール・ジャン・ジューブ著。小島俊明訳。

昭和53年4月15日初版発行。フランス装。大判。この本はほとんど全くといってよいほどでない。マニア泣かせの一冊である。この本で躓く森開社コレクターも多いと聞く。つまりこの本を入手できるかどうかで、完揃えが可能かどうか決まってくるといっても過言ではない。筆者は約7年前、森開社の社長の小野氏から直接この本を見せてもらったが、その後、入手できるまで「一回」もこの本を見なかった。小野氏自ら「この本はでない」といっている。なにか特別な出ない理由があるのかもしれない。そういえばこの本にはどこをみても「定価」が記されていない。ますます謎めいていて妖しい本だ。しかしそれだけこの本には「探しがいがある」というものだ。心を鬼にして探してください。古書価は全く不明。 

 

 

 

『狂気の銅版画家 シャルル・メリヨン』

ピエール・ジャン・ジューブ著。小島俊明訳。

1976年4月20日初版発行。函完本。1000部限定。特装本100部。写真多数。古書価5000円程度。この本は良く出てくる。人気もあまりないようだ。まあ無名の版画家の伝記といったものだからしょうがないだろう。 

 

 

『リラダン=マラルメ往復書簡集』

白鳥友彦訳

1975年6月25日初版発行。限定900部。各冊検印。函完本。写真多数。古書価8000円〜10000円程度。この本はあまりでない。内容も著名な作家同士の書簡集という珍しいものであるだけに人気があるのだろう。意外とてこずる可能性があるので発見したら、即入手が好ましい。 

 

 

『火』

マルグリット・ユルスナル著。多田智満子訳。

1974年11月25日初版発行。装丁、野中ユリ。限定1000部。紙ちつ、函完本。栞付き。古書価10000円程度。意外と出易いので安く拾うことも可能な本。内容はアフォリズムとも小説ともつかぬ妙なものだが、だからこそ人気があるともいえる。函が焼けやすい素材で出来ているので、実際に現物を手にとってから買うのが好ましい。 

 

  

『影を売った男』

アーデルベルト・フォン・シャミッソー著。大野俊一訳。

1976年2月20日発行。限定700部。函完本。「旧友ペーター・シュレミール」、「フーケからシャミッソーへ」、「『シュソミール』に関する書簡」併録。中篇小説。本書は意外と出ない。かなりてこずる可能性もあるだろう。古書価は5000〜10000円と結構幅がある。 

 

 

『ヴィリエ・ド・リラダン』

ステファヌ・マラルメ著。岩田俊一訳。

1977年12月24日発行。限定333部記番。カバ・函完本。「叢書<<叛逆者の復活>>2」。本書はマラルメの講演をまとめたもの。しかし講演といってもけっして解りやすくはない。「叢書<<叛逆者の復活>>」の企画はこれ一冊で頓挫したらしい。残念。本書もでない。根気で探すしかない。古書価は7000円前後か? 

 

 

  

『魔女伝説』

テオフィル・ゴーチェ著。川口顕弘訳。

1979年10月3日発行。限定360部記番。函完本。ゴーチェは小説家であるが詩人としても有名。本書はゴーチェの第二詩集にあたる。第一詩集は『詩集』。総じて難解。ゴーチェ初心者は小説から入ったほうがいいだろう。海外文学上級者向け。入手難易度は中。古書価は5000円前後か?

 

 

 

『スマラ または夜の悪魔たち』

シャルル・ノディエ著。秋山和夫訳。

1974年2月15日初版900部発行。裸本完本。コレクシオン・シメールの一冊。一応小説風だが、ノディエ自身はこの作品を詩篇と呼んだという。内容は怪奇な幻想に毒された男のモノローグ。総じてこの作品は散文詩と呼ぶのが正解だろう。短編『午前一時の幻』併録。この本は出やすい。森開社本では一番出易い本ではなかろうか?古書価も3000円程度と手ごろ。 

 

 

『フランソワの薔薇』

ジャン・コクトー著。高橋洋一訳。

1975年11月20日発行。限定500部記番。裸本完本。本文二色刷り。アンカット装。内容は詩集。外国詩に疎い筆者でも十分理解できるほどわかりやすい。ところで本書はでない。『ボードレールの墓』に次いででない森開社本ではなかろうか?古書価は5000円程度。 

 

 

 

『静寂』

ジョルジュ・ローデンバック著。村松定史訳

1986年11月15日初版発行。カバ完本。薄冊81p。小説『死都ブリュージュ』であまりにも有名なローデンバックの詩集。陰鬱な都市の風景を朗々と語る長編詩。きわめてわかりやすい。外国文学初心者にお薦めである。本書は出やすいし古書価も安い。2000円程度で買える。 

 

 

 

『おかしな家族』

ジャン・コクトー著。江口清・河村芳江共訳。

1977年5月15日初版発行。略フランス装。元パラ付き。薄冊53p。挿画鈴木康司。本書は絵本といってよい。極めてほのぼのとした挿絵が沢山挿入されている。内容は子供向けだが大人の鑑賞にも十分耐え得るものだ。童話ファンにお薦めの一冊。また本書は父娘で共訳したそうだ。なんともほほえましい一冊ではないか?本書はほとんど出ない。また古書価も10000円程度はするだろう。しかしその価値はある。お薦めです! 

 

 

 

『鏡』

ジョルジュ・ローデンバッハ著。高橋洋一訳。

1976年7月25日1000部限定発行記番。ハードカバー丸背上製。カバ完本。短編小説。図版多数。生原稿復刻併録。きわめて明快な幻想小説。短いので30分程度で読める。入手難易度は中程度。古書価は5000円程度。 

 

 

 

『ヴィリエ・ド・リラダンの復活』

レオン・ブロア著。田辺貞之助訳。

1976年5月20日限定1000部発行。函完本。本文2色刷り。挿絵多数。リラダンの伝記ともリラダンを題材にした散文詩ともいえる奇妙な書物。奇妙だからこそ人気があるともいえる。当然ほとんどでない。古書価も10000円前後。入手するにはかなり苦労するだろう。またカバー付き異装本も存在する。購入の際は注意してください。カバー版はあまり人気がない。函版が「正統版」というべきか? 

 

 

 

『テオフィル・ゴーチェ小説選集』(全3巻)

テオフィル・ゴーチェ著。田辺貞之助訳。

第一巻1976年3月30日限定1000部発行。

収録作品。「ある夜のクレオパトラ」、「金髪をたずねて」、「水辺の楼」、「黄金の鎖」、「狙いの星をいただく騎士」、「オンファール」、「パンの靴をはいた子供」、「鷲の巣」。

第二巻1976年5月30日限定1000部発行。

収録作品。「阿片のパイプ」、「ハッシッシュ愛好家クラブ」、「魔の眼」、「カンドール王」、「夜の訪問客」。 

第三巻1976年12月25日限定1000部発行。

収録作品。「変身」、「ポンペイ夜話」、「死霊の恋」、「ミイラの足」、「コーヒー沸かし」。

三巻とも丸背上製貼函入完本。限定番号記番。当初全10巻の予定だったものが訳者の田辺氏の急逝により、3巻で頓挫したもの。それでもゴーチェの小説の作風はこの3巻のみで十分把握できるだろう。バラでもでるが揃えるのが大変なので、本当に欲しい人は3巻一括で買ったほうがよいだろう。3巻一括でだいたい2万5千円〜3万5千円が相場。一括で買うなら出やすい。 

 

 

 

『マリの死に寄せる瞑想』

モーリス・ド・ゲラン著。榊原晃三訳。

1986年6月3日限定450部発行。略フランス装完本。本文アンカット。ゲランの親友の妻、マリが夭折した際に痛恨の思いで、ゲランが書いたエッセイ。しかしエッセイにしては意外と難解だ。時に詩のようにもなり、また時には哲学調にもなる。本書はよく出る。古書価は3000円程度。

 

 

 

『カランドリエ』

ロベール・ド・モンテスキュー著。白鳥友彦訳。

1982年9月限定380部発行。本文未綴り。付録白鳥友彦著『世紀末プレシューの宴と詩』付き。本書はなかなか異色な本だ。1月〜12月のそれぞれの月に合った詩が挿入されている。本文余白にはなぜか蝙蝠の絵が印刷されている。内容より装丁が勝った本といえるだろう。面白い装丁の本が好きな人にお薦め。本書はよく出る。古書価は2500円程度。 

 

 

 

『夢の研究』

白鳥友彦詩集。

1986年5月10日限定150部発行。略フランス装。本文アンカット。翻訳家、白鳥友彦氏の詩集。日本人の詩とはかけはなれたいかにも「外国風」の詩。総じて難解。外国詩が好きな人は買ってください。本書はよく出る。古書価は2000円程度。 

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)