『蒼太の美学〜蕩児の果て〜』

 

   

 

斎藤夜居著。街書房発行。愛書家くらぶ限定本。限定350部記番。初版昭和49年4月20日発行。カバ・函完本。宮内棲挿画貼り付け。

 本書は戦後風俗研究家・斎藤夜居(さいとうよづえ)の主宰する「愛書家くらぶ」限定本の第二回作品である。第一回作品は『コレクトマニア奇誕』、第三回作品は『猟本猟奇』でこのシリーズは完結する。この三冊のなかではやはり第二回作品の『蒼太の美学』が一番出ない。

 さて「蒼太」とは江戸川乱歩の実弟の「平井通」の雅号である。本書はこの「平井通」の破天荒な生き様を見事に生き生きと描写した好読物となっている。 

 江戸川乱歩との共同経営していた古本屋時代から、艶本研究に賭けた情熱、そして晩年の「真珠社」での豆本製作の話まで古書を愛する人間であるならば興味が尽きない内容である。

 平井通のようなマニアが実名で多数登場、古本界の内幕を知るのには持ってこいの内容となっている。古書マニアであるならば一度は読んでおくべき書物であるとわたしには考えられる。

 さて本書は函欠本が多い。通信販売で買う時は注意が必要であろう。古書価はそれほど高くないことはありがたいことといえるだろう。