前衛短歌第二世代

昭和20年代後半から勃興した前衛短歌はすなわち塚本邦雄・岡井隆両名によって代表されるだろう。この両名の登場は戦後短歌とその発生土壌である歌壇に対する激烈な方法的・題材的な反逆であった。しかし昭和30年代半ばから全く今までの短歌的文脈から外れた二人の代表的歌人が登場する。それが春日井建と寺山修司である。春日井建は主に都会的な若者の放埓な心情を吐露する形で歌壇に衝撃を与えたのに対し寺山修司は牧歌的風景の中に新たな戦後の若者像を描き出した。このように一見対照的だがこの二人の若手歌人に共通するものは「戦争によって傷つけられなかった世代」の登場といえるだろう。事実この二人の歌に反戦詠的な歌はほとんど見当たらない。その意味で春日井建・寺山修司の二名もまた戦後短歌から完全に訣別した「前衛短歌第二世代」として区分することができるだろう。

 

春日井建