東 京 象 景 十 句
《 新仮名表記にしています。》
by 向 井 未 来
淡雪に銀座の野猫ひげ濡らす
蔵前にふどし干しあり春埃
小走りに梅雨の渋谷や石畳
香水の乗り替ったる御茶ノ水
賑いを見せて極暑の晴海かな
狐火の湯島を過ぐるあたりより
日向ぼこ施て新宿南口
アメ横の昔日戻る師走かな
初荷など前を環八通りかな
終電や三日月冴ゆる水天宮
※ 連作俳句は、内容あるいは主題が重なる複数の句で構成される一連の作品で、昭和6年ころから水原秋桜子によっ
て唱道され、10年ほどの間おおいに流行した。昭和9年発表された日野草城の「ミヤコホテル」十句が有名である。