熱　帯　魚

　　　　　　　　　　　　　　　　　向　井　未　来

 

夏雨に後ろを感ず午前二時

 

夕立や出るの居るのと夫婦連れ

 

米(べい)ナスやこぶとり爺さんほっくほく

 

蟻の列始め終りのなかりけり

 

マネキンの全裸の腕に夏帽子

 

母の日や冬(とう)虫(ちゅう)夏(か)草(そう)のような絵も

 

短(みじか)夜(よ)や車を招く二人連れ

 

Ｆ(エフ)１(ワン)のエンジン焚(た)かる炎暑かな

 

熱帯魚飼われて四角四面かな

 

爆音や蟹が踏んばる磯がしら

 

鼻先の涼しげに巫(み)女(こ)通り過ぐ

 

重力や尺(しゃく)蠖(とり)もどる竿の先

 

幽(ゆう)霊(れい)の出そうで出ぬも京の夏

 

蜂の巣を遠巻きにして男ども

 

羽抜軍鶏(しゃも)ドン・キホーテと徒名(あだな)つき

 

炎天や用事を足(た)しに人歩く

 

三人の知恵湧(わ)かんとすビアガーデン

 

〔 新仮名表記にしています。〕

 

 

 

 

 

長野・善光寺放生池の亀

 

 

 

 

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