留守の閑寂
向 井 未 来
淡雪を口あけ胃なぞに通しみん
捨て猫に名付け親いて雪の果
歯車の音のしもせで春の闇
万愚節終着駅の始発発つ
花人の目もと足もと宙にあり
おろおろと尿場さがす花の下
「べからず」の立札なくて花の土手
朧夜の机上淋しき哲学者
東京の人入れ替わる四月かな
春うらら列車の尻へ挙手の礼
山の気の里へ忍べる春の宵
蛸壷は留守の閑寂春の潮
菜飯食ぶ山から海へ風吹く日
よっこらしょ亀鳴くを見に起きにける
鮒針によくぞ食いつき蘆の角
〔 新仮名表記にしています。〕
戻 る Home Page
秋田県秋田市・太平川岸の桜並木