自句自註 「梅雨晴」
向井未来
梅雨晴やヘクトパスカル上昇す 未来
外来語というか片仮名語というか、私は俳句にはなるべくなら使わないようにして
いる。
だがこれまで、パンダ、ポリペール、スタンバイ、コンクリ、カーステレオ、ヘク
タール、マグマ、アクセル、リモコンなどなど、4、50語ぐらいは使ってしまった。
この句が出来たのは、天気予報でお馴染みだったミリバールがヘクトパスカルに変
わって1、2年後のことである。ヘクトパスカルは今では誰でも知っている片仮名語
となった。私はこのように、日常生活で一般に使われている片仮名の言葉はごく気軽
に詠み込んでいる。
さて掲句の意味だが、梅雨の晴れ間に一とき気圧が上昇したという唯それだけのこ
とである。もちろん、ヘクトパスカルは気圧の単位そのものであるから、日本語に訳
しても「気圧」にはならない。一語一語を分解して正確に文意を把握しようとすると
妙なことになってしまう。だが、「ヘクトパスカルが上昇する」と言われると、何と
なしに晴れ空が広がって行くような光景を想い浮かべていただけるのではないだろう
か。
なお最近、「台風や忘れしものにミリバール」という、掲出句からの連想句を作っ
ている。
・・・秋田県秋田市・金足 = 「水心苑」・・・