自句自註 「祭り前」

 

向井未来

 

 

禰宜どのが普通に笑う祭り前     未来

 

 

町でも規模が大きなほうに数えられる神社の祭りの日が近づいている。境内の掃除

 

やら鈴の房の取り替えやらで、忙しい日が続いている。禰宜さんも忙しいが、毎年盛

 

況である祭り当日を想い浮かべると、準備の指示をするにも自ずと気合が入る。

 

世の中はバブル経済の破綻以来の不況が久しく、リストラの憂き目にあったり、学

 

生さんたちの就職状況もかんばしくない。が、こんな時だからこそ神頼みという言葉

 

があるではないか。

 

今年の寄付はいつもの年より多く集まるかもしれない。たまたま通りかかった懇意

 

にしている氏子と話をしている様子は普段と変わらず、禰宜どのは普通に笑っている。

 

ごく有りふれた光景である。

 

 

 

・・・栃木県日光市・鬼怒川温泉 = 龍王峡・・・

 

 

 

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