自句自註 「冷奴」

向井未来

 

真四角の角鋭けれ冷奴   未来

 

優柔不断な態度でいると、「豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ」と罵られる。

 

角切りにされた真っ白な奴豆腐の角は鋭く、氷の冷たさにますます引き締まり鋭く

 

固く見える。豆腐は柔らかいものとの先入観念が引っ込んでしまった。「真四角に

 

切ってある冷奴の角が鋭い」との散文的文言を、五七五に整え直したらこうなった

 

という、まことに気軽な作である。

 

発表時は「真四角に」であった。語調からすれば「の」が相応しいと考えが変わ

 

り、後で改めたものである。音調的には「の」のほうがすらすらと繋がる。「に」

 

から「の」という助詞に変わったことで、副詞的用法から形容詞的用法に置き変わ

 

った。冷奴は私の好物の一つである。

 

所望して二晩続く冷奴    未来

 

 

 

大阪城 「伏虎と鯱瓦」

 

 

 

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