『女神たちの館(マドンナミストレススペシャル)』

 

 

館淳一著。マドンナ社発行。二見書房発売。2003年6月10日初版発行。カバー・帯完本。397p厚冊。 

内容

「姉はミストレス」
「フェチなエッセイⅠ 美少年論 いじめられる小林少年」
「女神の双頭具」
「フェチなエッセイⅡ 理想の「強い女」」 

 1990年代後半のSM界で一世を風靡したマドンナメイトの新機軸である「マドンナミストレス」であるが、本書は「このシリーズはでオシマイ」と思われる書物である。
 筆者は2000年代に入ってから発行された「マドンナミストレス」の書物を本書以外で一度も見たことはない。
 恐らく本書『女神たちの館』が「マドンナミストレス」に終止符を打つ記念碑的書物であり、それであるが故に「マドンナミストレススペシャル」と銘打たれているものと推測する。

 さて本書は1995年に「マドンナミストレス」の一冊として出版されて反響を呼んだ『女神の双頭具』の新装版という側面が強い本である。
 しかしその他にもなかなかに読み応えのある「姉→弟」モノのマゾ系SM小説「姉はミストレス」や館淳一のエッセイ2編を収録する。

 このエッセイで館淳一は江戸川乱歩の小説に登場する「小林少年」への憧憬を語ったり、「強い女性」の代表として米国女優のシガーニー・ウィーバーを挙げて、彼女が男を殴り倒すシーンをぜひ見てみたいなどと熱く語っている。
 この二編のエッセイでわたしたちは官能小説家ではなく、「ナマの男性」である館淳一の魅力に迫ることができるのである。

 さて本書の要諦である「女神の双頭具」であるが、この小説の世界ではインターネットが重要な役割を果たす。
 インターネットなど現代(2017年)ではごくありきたりのものになってしまったが、1995年当時はかなり尖端的でマニヤックなツールであったのではないだろうか??
 さらにいじめられる役の男性が20代前半の美少年であり、さらにこの当時としては異色ともいえる「女装SM」の要素が盛り込んである。
 筆者独自の調査では「女装SM」の愛好者はかなり多いようで、まさに「女神の双頭具」は「時代を先取り」した尖端性に溢れた画期的なマゾ系SM小説であったと言える。

 まさに本書はインターネットや女装SMなどを「ごく普通の存在」として感受する、「アキバ系」と呼ばれたりアニメ等のサブカルチャーに夢中の昨今の若いM男性諸君にぜひ読んでもらいたい内容に仕上がっている。

 今はなき「マドンナミストレス」最後にして最高の一冊であると自信を持ってお勧めできるのが本書である。

 

(影姫&黒猫館&黒猫館館長)