『六月のみどりの夜わ』

     

 

第一詩集。コスモス社発行。初版昭和25年8月15日。外装なし完本。記番入。 

 安東次男は1919年岡山県生。東京大学経済学部卒。戦前は俳句を学ぶ。昭和24年第二次『コスモス』に参加。その後、『コスモス』が、その流れを継ぐ『列島』に改変された時期に結社を離れるが、実際は安東次男は『列島』のシンパであるという見方が有力である。詩集の他には『幻視者の文学』『搬河歌の周辺』(読売文学賞受賞)『現代詩の展開』『芸術の表情』『芭蕉』など著書大多数。名実共に戦後を代表する重要な詩人としての地位を確立する。
 その詩風は左翼的立場から書かれた左翼抵抗詩が基本なのであるが、従来の左翼詩に見られぬ新鮮な発想と柔軟な方法意識によって時には美しく、時にはグロテスクに対象物を詩的に加工することに特徴がある。
 戦後左翼詩から出発して現代詩に新しい可能性を開いた『列島』では最も重要と言える詩人である。 

 さてこの第一詩集『六月のみどりの夜わ』であるが、まずこの本は美本が非常に少ない。ほとんどがヤケ・ワレ・イタミのある本である。美本を探すのは至難の技であるが、安東次男の第一詩集という戦後詩史的にも重要な詩集であるだけにできるだけ綺麗な本を入手しておきたいものだ。
 この本の古書価は状態による。美本だと当然のごとく高い。あまり綺麗でない本なら意外と安い値段で出る可能性はある。

 

 

 

『蘭』

 

第二詩集。月曜書房刊。フランス装完本。初版1951年6月1日発行。限定300部記番。大判

  

 本書は安東次男が詩壇に登場するきっかけとなった非常に重要な詩集である。この詩集一冊で安東次男は戦後詩壇における最も独創的な詩人であるという地位を確立した。
 本書は『六月のみどりの夜わ』とは違って、大判である上に挿絵も豊富であり字も大きいと、まさに「本という感じのする立派な本」である。 
 この本は意外と保存状態の良い本が多いので美本を入手するのにさほど苦労しないだろう。その代わり古書価が高い。以前は80000円前後であったが最近は50000円前後まで下がっているらしい。懸命なコレクター諸君はこの機を逃すわけはないだろう。将来また古書価が上がるのは必須である名詩集である。

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)