【西欧滞在日記 その35】終着駅から〜パリ〜(弐)

  

 

 エッフェル塔中央広場から凱旋門、そしてシャンゼリゼ通りへ向かい始めたわたし。

 風が吹いてくる。
 小雨がぱらつきだした。
 まるで今のわたしの暗鬱な心中をそのまま抽出したような天気だった。

 パリにはローマのような猥雑さがない。
 極めて小奇麗で整った街だ。
 もっともそれ故「面白みがたりない」と思うヒトも多いだろう。

  

 

 黒いコートを颯爽と纏った金髪美女がとおりすぎる。
 さすがファッションの街、パリ。ふと横を見ると「KUNIKO」というブランドショップが見える。山田邦子が経営しているのだろうか。

 シャンゼリゼ通りを10分ほど歩いた頃であろうか。
 横におもちゃ屋らしき店が見える。看板には「ウォルト・ディズニー」とある。わたしは思わず「これだ!」と叫んだ!おもちゃには眼がないわたしなのだ。
 家族へのおみやげもこの店で買おう。ウフウフ。暗愁な気分もおもちゃ屋の前ではたちまち吹っ飛んだ。なんという単純明快なわたし!

  

 

 店に入ると凄いヒト、ヒト、ヒトである。
 日曜日だからだろうか。とにかくフランス人と押し合いへし合いながら奥へ入る。

 

 とすると真っ先にわたしの眼に飛び込んできたのはピカチューの巨大なぬいぐるみであった。
 さらにゆくと「パワーレンジャー」(日本の戦隊モノを欧米風にアレンジした作品)のグッズが沢山置いてある。
 さらになぜかトトロやネコバスなどのジブリ関係のグッズもある。

 話には聞いていたが日本のアニメ・特撮産業がヨーロッパでもこれほど幅を利かせているとは思わなかった。

 わたしはあれこれ迷ったあげく結局「パワーレンジャー」のマグカップを父・母・わたしの三人分・三個を買った。これでかなりのユーロが吹っ飛ぶ。しかしおみやげだから仕方がない。

 とその時、妙な感覚がわたしを襲った。
 トイレに行きたくなったのだ。
 バスの中でミネラル・ウォーターを飲みすぎたのがいけなかったのであろうか。

 わたしは早く会計してトイレを貸してもらおうとレジへ急いだ。

 会計を済ますとレジの金髪お姉ちゃんにわたしは言った。「トイレ?」

 「ノー。」済ました顔でお姉ちゃんが言った。なんとディズニーショップではトイレは貸さないのだ。いや、後で知ったとこであるがフランスではそう簡単にトイレを貸してくれる場所は少ないらしい。

 わたしはあわてふためいてディズニーショップから飛び出した!

 トイレを探して・・・

 

 (黒猫館&黒猫館館長)