【西欧紀行 その22】無防備都市(弐)

 

 

 サン・ピエトロ寺院。
 世界最大の大聖堂。
 カトリックの総本山。
 建造は4世紀。

 バチカン市国の南端に建立され、その横には歴代教皇が住むバチカン宮殿が存在する。
 とこれだけの説明で、わたしのような小心者は「参りました〜!!」と土下座してしまいそうであるが、なんとこのわたしがサン・ピエトロ寺院の内部に入り込むのだ。これでは緊張せずにいられない。

 寺院入口にはいかめしい顔をしたガードマンが立っている。ミニスカ・タンクトップのふとどき者が侵入しようとしたら、たちまち取り押さえられ、バチカンの市外まで叩き出されるであろう。

 おそるおそる寺院の入り口をくぐるわたし!
 をお!!GOD!大いなる天帝よ!三位一体の神よ!
 キリスト教を全く信じていないこのわたしを赦したまへ!!

 アーメン!

 などとわたしがひとりで興奮していると、たちまちスルリと寺院内部に入りこんだ。

 

 これがまた凄い!!
 ミラノのドゥオモよりも凄いど迫力!
 秋田県立体育館なんぞ比べものにならんデカサだぞ。

    

 まるでリドリー・スコットの描く宇宙船のような大空洞!
 
 とふと横を見るとなんとあの「ピエタ」が鎮座している。フィレンツェで観たミケランジェロとは一味違う作風が感じられる。
 かってある芸術家が「ピエタ」の持つあまりの美しさに嫉妬して破壊しようとしたことがあるそうである。それ以後「ピエタ」にはガラスケースがかけられたそうだ。
 「美に嫉妬」とは三島の『金閣寺』を地でゆくようなグレイトな逸話ではないか。

  

 さらに出るわ、出るわ、デカイ彫刻の大乱舞!つくづくイタリアとは彫刻の国であるのだと恐れ入った次第である。

 中里カップルも宮崎老夫婦も関西から来た女性二人組みも口を半開きにしてポカンとしている。さよう。まさにグレイト。まさに圧倒的。まさに巨大建造物。

 小さな小さな日本人はさらにひたすら小さくなっているしかなかった。

  とふと現実に帰るともう出口である。
 わたしは「やれやれ・・・」とあまりに「濃ゆい」サン・ピエトロ寺院の味付けに打ちのめされたようによろよろと出口に出た。

 とここで添乗員の吉永さん登場。

 「ハーィ!みなさん、お疲れさまでした!本日のローマツアーはこれからトレドの泉に向かって、さらにスペイン広場に向かいます!!本日はそこで解散して自由行動になります!!以上!」

 時間はちょうど昼12時。
 これからスペイン広場へ向かうわたしであったが、そこで待つものは一体・・・?

     

(黒猫館&黒猫館館長)