【西欧紀行 その20】春四月 花の都を駆け巡る(下)


 フィレンツェの街中をトボトボ歩いてついに最終目的地まで接近したわたしと中里カップル。このスポットはウフィツィ美術館、サンタ・マリア・デル・フィオーレに続いてフィレンツェの三大名所と呼ばれている。

 その名はミケランジェロ広場。

 ミケランジェロ広場の名に恥じぬがごとく、あの有名な「ダヴィデ像」がどーんと鎮座している。それにしてもミケランジェロはよくもまあ、「これでもかッ!」というぐらい男性の裸体を彫り続けたものだ。男性裸像が大好きなわたしとしては尊敬に値する人物である。

   

 ミケランジェロの「ダヴィデ像」の真似をしたポーズで中里カップルに写真を撮ってもらうわたし!わたしもダヴィデ像のように筋肉隆々になりたいものだ。よし!日本に帰ったら筋トレしよう!

 ダヴィデ像から反対側に周ってみるとコレは凄い!
 フィレンツェの街が一望できる超・景観!
 この景観にわたしはしばし言葉を失い立ち尽くしてしまった。

  まるでフィレンツェを箱庭にしてぎゅう!と押し込めたようだ。

 ウフィツィ美術館からベッキオ宮殿、そしてアルノ河にかかるアルノ橋(あの四階建ての橋)、そしてサンタ・マリア・デル・フィオーレに、その後ろにそびえるブルネレスキのクーポラ。

 このブルネレスキのクーポラは開いた傘に喩えられたり、貴婦人のスカートに喩えられたり、ランプシェードに喩えられたりするのだが、わたしとしてはどうもハムスターのような小動物に見えて仕方がない。実にカワイイ・クーポラである。

   

 さてそのようになんだかんだしているうちに自由行動の終わりの時間が近づいてきた。午後3時。これからツアー一行はいよいよローマに向かって出発する準備に取り掛かからねばならぬ。

 

 平穏なフィレンツから一転して物騒なローマへ。
 しかしこの時のわたしにはまだローマで何が起こるのか?を知る余地がなかった。

  「さらば!フィレンツェよ!また会おうぞ!!」

  中里カップルと共にミケランジェロ広場を後にしたわたしはフィレンツェという一日限りの恋人にしばしの別れを告げた。

  

 「ローマへ!」
 ツアーはいよいよ後半戦に入るのだ。
 わたしはカブトの緒を引き締めるようカバンのファスナーを強く握り締めた。

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)