【西欧滞在日記 その15】ウフィツィ美術館漫遊記 

 

  

 

 ウフィツィ美術館。

 別に「ウフウフ・・・」と思わずほくそえんでしまうような絵画ばかりが飾られている美術館なわけではない。もっとも中にはそういう絵もあったが。

 ウフィツィ美術館の「ウフィツィ」とは「事務室」の意味だ。つまりこの美術館はもともとメディチ家の事務室であった。その証拠に隣のベッキオ宮殿からウフィツィには「橋」がかけられている。この「橋」はかの有名なベッキオ橋と同じ構造をしている。メディチ家の当主はよほどベッキオ宮殿から他所へ橋を架けたかったとみえる。まるで積み木で遊ぶ子供のようでなんとも微笑ましいではないか。

 さてウフィツィ美術館はイタリアでは質・量ともに最高の美術館と謳われており、1982年には世界遺産に登録された。

 要するにウフィツィ美術館は並大抵のものではないのだ。ルーブル美術館なみに凄いと思ってもらって間違いなかろう。





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 いよいよウフィツィを見学するために館内に足を踏み入れるツアー一行。添乗員の吉永さんの後をぞろぞろついてゆく。ちなみに今回はヴェネチアのサンマルコ寺院見学の時のように最後尾を守る人間はいない。わたしは警戒を強めるためなるべく吉永さんの真後ろについて見学することにした。


 最初は中世絵画の部屋。

 なんだか子供の書いた絵のような平面的な絵が並んでいる。遠近法がまだ発達していなかったのであろう。こういう絵をつまらないと思う人がいるかもしれないが、わたしは現代の「アウトサイダー・アート」(芸術的な訓練を受けていない人が描いた絵を指す)をみるようでそれなりに面白かった。



 その次は昨今「ダ・ヴィンチ・コード」で一躍注目を浴びたレオナルド・ダ・ビンチの部屋。残念ながら「最後の晩餐」は他の美術館にあるとのこと。しかしかの有名な「受胎告知」はしっかりかかっていた。ちなみに「受胎告知」とは大天使ガブリエルがマリアさまに「あなたは神サマの子を妊娠しました」と告げている瞬間である。





 さてこれは感動的な瞬間なのであろうか。

 わたしは嫌である。いくら神サマの子でもいきなり妊娠させられたらたまらない。ちゃんと「妊娠させていただいてもよろしいでしょうか?」と聞いてYES・NOをはっきりさせてから告知してほしいものだ。それが人権というものだ。

 この「受胎告知」のモチーフの絵ではマリアさまの表情にいろいろなヴァリエーションがあるとのこと、ダ・ヴィンチのマリアさまはまるで怒ったようにガブリエルをにらみつけている。

 さて次はボッチチェリの部屋。
 ボッチチェリの部屋に入るやいなや、あのあまりにも有名な「あの絵」が視界に飛び込んできた!

 

 (この項つづく)

 

(黒猫館&黒猫館館長)