【西欧紀行 その6】胎児の夢〜あるいは幕間劇〜

 

 

 

 

 場所は横須賀ウルトラどぶいた横丁!
 イカマン(実はイカルス星人)が横須賀スカラ座から登場する。

 

 

 

 タコマン(実はメトロン星人)「まてッ!」
 イカマン・タコマン(がしッ!)←がっぷり四つ!!
 イカマン「タコマン!貴様はなぜそこまでしてわたしを追い詰めるのだ!?」
 タコマン「憎い!お前が憎い!憎いからだよ!!」
 イカマン「なぜ憎む!?なぜわたしが憎いのだ!?タコマン!!」
 タコマン「自分の胸に聞いてみな!イカマン!わたしは世界の代弁者なのだよ。このギザギザの手をお前の太った顔に突き立てる!」
 イカマン「そこまでされる筋合いはない!」
 タコマン「そこまでされねばならぬ!お前は永遠の釘!故に永遠に打たれ続ける!」
 イカマン「死なぬ!死なぬぞ!!生き延びてやる!!」
 タコマン「生き残れるかーーーーーーーーーーーッ!?」
 イカマン「再び問う!おまえがわたしをいたぶる目的は!?」
 タコマン「ならば言おう!!おまえに対する愛情表現がこうさせるのだ!好きだ!すきなのだよ!イカマン、お前だからこうするのだ!こうして痛みをわかつのだ!」(ギザギザの手をイカマンの腹につきたてる!」(タコマン号泣)
 イカマン「わたしはおまえの愛に応えるわけにはいかない!」(イカマン、タコマンの頭をはがいじめにしてめきめき砕く!)
 タコマン「ぐ、ぐぎゃーーーーー!!」

 イカマン「スマヌ。オレはまだ死ねぬのでな。・・・」

 (イカマンは横須賀ウルトラどぶいた横丁を通ってウルトラ学校へ帰って行く!!)

 

 

 

 

 そこまで観た時、わたしはハッ!と飛び起きた。
 場所はイタリア・ミラノ郊外ラマダホテルの一室。いつもの見慣れた自分の部屋でないことがわたしを混乱させた。

 「ゆ・・・夢か、、、・・・」
 わたしは額の汗をぬぐうとベットの脇に置いてあるミネラル・ウォーターをゴクリと飲んだ。
 「それにしても何だ?・・・今の夢は??」

 いにしえの特撮番組「ウルトラファイト」の巻き返しのようにも見えるし、コロコロコミックに昔良く載っていた陳腐な怪獣漫画の焼き直しのようにも感じられる。

 もっと深遠に考えればイカ的文明観(アジア的)がタコ的文明観(ヨーロッパ的)と対抗するさまを描いた象徴劇のように思われる。(詳細は中沢新一・波多野一郎『イカの哲学』(集英社新書)参照)

 時間は午前4時。眠りに落ちてから3時間後。わたしは今観たばかりの夢を記憶しておくべくメモ帖を引っ張り出した。

 ヨーロッパの朝は早い。

 早くも明るくなり始めたラマダホテルの一室でわたしは、奇妙な夢をメモ帖に書き止めながら、本日から本格的に始まるツアーに対して期待と不安に打ち震えていた。

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)