【西欧滞在日記 その4】 シャルル・ド・ゴール空港到着 

 

 パリ郊外。
 シャルル・ド・ゴール空港。

 

 エールフランス775便から降りたツアー一行は添乗員の吉永さんの待つ空港ロビーへと向かう。  その途中にEU連合への入国審査がある。

 身体検査はパスしたがカバンで引っかかったわたし。

 カバンの中に入っている「写るんです」のパッケージを「・・・ホワット?ホワット?」としつこく問い詰められたわたしは、しかたなく写真を撮るゼスチャーをして審査員のフランス人お姉さんから逃げ延びる。

 

 到着ロビーについた時、初めて遭遇した人間はまるでミッシェル・フーコー(フランス人哲学者)のようなセクシーなスキンヘッドのおじさまであった。

 このフーコーさんだけでもインパクトたっぷりなのに、その次に現れたのはまるでダリル・ハンナ(ハリウッド女優)のような巨大な金髪の女性。

 さらにはマルコムX(黒人指導者)のようなスーツを着た黒人が現れる。

 こういったあまりに衝迫力に満ち溢れた方々を目の当たりにして、わたしは「あぁ・・・本当にわたしは外国に来てしまったんだなァ・・・」と疲れと陶酔の交錯した不可思議な境地に到達していた。

 やがて吉永さんが赤い旗を振る。

 「ハーィ!ここがパリのシャルル・ド・ゴール空港です!みなさん時計をPM5時30分に合わせてくださーい!・・・ミラノ行き飛行機はPM8時でーす!PM7時30分までにここに帰ってきてくださ〜い!解散!!」

 なんとミラノ行き飛行機発はPM8時。まだ2時間半もあるのだ。わたしはウンザリしながらシャルル・ド・ゴール空港の待合室を子供のようにうろちょろして時間を潰そうと試みた。

 まず売店で水とアイスクリームを買う。

 これがなくては話にならぬ。水が1・05ユーロ(約200円)、アイスクリームが3ユーロ(約450円)。高い!と思ったが今はドル安・ユーロ高の時期であったのだ。しかたなくパリパリの5ユーロ札を売店のお兄ちゃんに渡して5セント硬貨をおつりでもらうわたし。この調子だと帰国までお金が持つかしら?と少々不安になる。

 

 人種のるつぼをみながら、椅子に腰掛けアイスクリームをペロペロ舐めるわたし。「まるで子供のようだ・・・」と思っているわたしであったが、フランス人から見たら子供も同然だろうと妙に納得。

 次にミネラルウォーターを飲む。

 欧州で水道水を飲むのは禁物だ。さすがに腐っているわけではないもののこちらの水は「硬水」なので「軟水」慣れした日本人が飲むと下痢しやすいとのこと。故に水は買って飲む。

 水を飲んだらトイレに行きたくなった。さっそく空港のトイレを借りたが、なんとこれが便器の位置が高い!欧米人向けに作ってあるのだろう。しかたなく背伸びしながら用を足すと元の椅子に戻るわたし。

 そんなこんなでウロチョロしているとようやく7時30分が接近してきた。再び現れた吉永さんが旗を振る。

 「ハーィ!ミラノ行き御一行はこちらです!」

 あちこちから集まってきたツアーメンバーの頭数を数えながらようやく一行はパリからミラノに向かう飛行機に搭乗する。しかしパリからミラノまでと言っても2時間かかるのだ。無限に続くような白夜(フランスでは4月はPM10時まで明るい)に慄きながら、痛む足を引きずりながらミラノ行き飛行機に搭乗する。

 本当に、今度こそホテルまで到着できるのか心配しながら。

 パリ発。ミラノ行き。ようやく出発。PM8時。旅は始まったばかりだ。しかしこの時点でわたしはもうぐったりと疲れ果てていた。

   

 

(黒猫館&黒猫館館長)