【西欧滞在日記 その2】チーズの臭い

 

 

 2008年4月8日(火)快晴。

 成田空港出発ロビーに集合したわたしたち「イタリア・フランス9日間周遊ツアー」のメンバー約20人はやがて現れるであろう添乗員を待っていた。

 昨日のバス騒動とは裏腹に本日はキチンと7時に起き、ANA国際ホテルの上品な味の朝食を堪能したわたし。
 
 「今日は順調に行きそうだ・・・」とわたしはご機嫌な顔で同行メンバーの顔を物色していた。
 若いヒトもいるし、年配のヒトもいる。
 ひとりで参加らしい女性もいるし、カップルもいる。

 「なるほど〜」と参加メンバーの顔を観てニヤニヤしていたわたしの前にやがて添乗員が現れた。女性だ。しかも若い。30代前半だろうか。
 この添乗員は吉永明美(よしながあけみ(仮名))さんという。約20人のメンバーはこの赤い旗を持った吉永さんの後を幼稚園の遠足のごとくついてゆく。

 「エールフランス航空775便搭乗の方は搭乗ロビーまでお進みください。・・・」

 海外旅行だから全日空や日本航空ではないのである。わたしは始めて乗る外国の飛行機に一抹の不安を覚えていた。
 やがて搭乗が始まる。自分の席についてシートベルトを締める。スチュワーデスは全員フランス人だ。しかも日本語を話す。

 「こんにちはー!」

 フランス人スチュワーデスの元気な挨拶にわたしたちツアー参加メンバー20人は苦笑しながら挨拶を返した。

 やがて飛行機は離陸。しばしの別れよ。ニッポン。・・・などと感慨にふけっていた頃、スチュワーデスが「機内食」を配りだした。なんだか見るからに味付けの濃そうな食事である。さらにどうみても料理に合いそうもないオレンジジュースやらその他のごてごてしたものが並んでいる。
 
 しかもなにか臭う。なんだろう・・・?

 と考えながらわたしは機内食を口にした。

 「濃い!」

 案の定味付けが非常に濃い。これは日本人向けの食事ではない。明らかに外国人向けだ。さらに驚いたのがチーズである。チーズの包装を解くと強烈なチーズの臭いが臭ってきた。わたしは思わずげっぷが出そうになった。

 「本物の「チーズ臭い」とはこれほどのものだったのか!」

 これはなんとも言えない臭いである。おおよそ日本にいる時には経験できない臭いである。あえて形容すれば外国のアニメ「トムとジェリー」を臭いにすればこういう臭いになるという形容が出来るであろうか。

 それでも食べないわけにはいかない。わたしはゲップが出るのを抑えながら、異常なほどに味が濃い「機内食」を食べ始めた。あたりでプンプン臭う「チーズの臭い」に食欲を削がれながら。

 この「チーズの臭い」には旅行終了まで悩ませられたことを付け加えておこう。

 これが牧畜文化と農耕文化の違いか!

 初めて体験するカルチャーショックをまざまざと感じさせながら「エールフランス航空775便」は一応の目的地・パリを目指して飛んでゆく。


 それはしかし「まだまだ除の口」の驚くべき世界への出発であった。
    

   

    (黒猫館&黒猫館館長)