『四千の日と夜』

 

   

田村隆一著。第一詩集。初版1956年3月30日。東京創元社発行。袖文金子光晴・山本健吉。ハードカバー上製。カバ完本

 詩人・田村隆一は1923年東京生。戦前は「新領土」に参加、終戦後の昭和22年詩誌「荒地」創刊に参加。鮎川信夫、黒田三郎等と共に「荒地」の代表的詩人。その詩風は戦争とその戦争を発生させた日本的土壌を的確な比喩で射抜く所に特徴がある。しかし戦争に対する関心を保持しつつモダニズム的な純粋詩的な美学も併せ持っており、その詩の芸術的完成度は極めてたかいところに到達している。昭和38年高村光太郎賞受賞。

 さて田村隆一の第一詩集である本書の表題作「四千の日と夜」は「荒地」的な精神を的確に語ったことで、鮎川信夫の「死んだ男」と共に戦後詩の出発点として詩のファンなら必読の一編である。

 本書は古書価が高いにも関わらず、極めて出やすい。詩書急騰の時代にあっても入手が比較的容易な詩書である。それほど苦労せずとも入手できるでだろう。戦後詩を語る者なら持っていないとモグリと思われるほどの名著。

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)