『SF・怪談』

  

 

 1970年4月25日初版発行。ひばり書房。カバ完本。新書版。アンソロジー。

 怪談漫画の老舗、ひばり書房が貸本漫画時代を終え、新書版販売漫画時代に移転した時代の最初期の作品集。
 まず執筆陣と内容だが、いばら美喜『みなごろし』、浜慎二『見開かれた目』、小島剛夕『猫目石』、楳図かずお『ばけもの』、古賀新一『人形の声』、古谷あきら『奇声』とめちゃくちゃに豪華なラインアップになっている。特に楳図かずおと小島剛夕の参入は大きい。漫画の内容も貸本調を引きずりながらも、新しい試みをしようとする姿勢が各作家に感じられ、好感が持てる。筆者はいばら美喜の『みなごろし』が一番好きである。ストーリーはあまりに身も蓋もない話なのでここでは書きません。読者の皆さんが直接読んでください。びっくりします。
 総じてあざとさの対極にあると思われる作品ばかりで、好感が持てる。もちろん現代ではこういう漫画は一般には浸透しないだろう。しかしそれだけ現代の漫画が「小奇麗」で「あざとく」、漫画本来の破天荒なパワーを失っているということも事実なのだ。こういった作品群がまた再登場する日を筆者はまっています。
 本書には「白色装丁本」と「黒縁装丁本」の二種類がある。後に多発されるひばり怪奇漫画との統一感にこだわる向きには「黒縁」を、そうでない方には「白色」をお薦めします。「白色」の方が上品な感じがするからである。古書価は「白色」が一万円程度、「黒縁」が五千円程度。一年ほどの探求で入手可能だろう。マイナー系怪奇漫画の蒐集を志す人はもっていないとモグリと思われるほどの名著。 

 

 

黒猫館&黒猫館館長