『悪魔王国の秘密』

   

 

佐藤有文著。立風書房刊(ビックジャガーズ)。カバ完本。初版1987年3月15日

 西洋では「悪魔学」なるものが存在し、幅広く研究されているという。本邦でも水木しげる・京極夏彦らの「妖怪研究」が有名である。日本人からみたら「悪魔学」とはなんと珍妙な?と一笑にふす人が多いであろうが、キリスト教がしっかりと根を張った西欧諸国では「悪魔」は他人事ではない重大な関心事なのである。それ故「悪魔学」が発展することも当然であろう。

 さてそのような「悪魔学」の土壌のない日本に突如出現した「悪魔学の本」が本書である。澁澤龍彦・生田耕作らの「黒魔術の研究」は有名だが「悪魔」というものに焦点を絞った本はなかなか日本ではなかった気がするから本書は貴重な文献である。

 本書ではほぼオールカラーで「悪魔王国の組織図」が提示され、そして1匹1匹の悪魔についてじつに念入りに図版入りで紹介している。このような破天荒な試みは児童書でなくてはできなかったであろうと思わせるのに十分な迫力である。

 さてオカルトの会「マラリア会」に所属し、世界中のオカルト物件を探索して歩いたという伝説的人物、佐藤有文がなにゆえ児童書の世界から出ることが出来なかったのか?それは筆者が思うにあまりにも「本気」であったからだろうと思う。日本ではオカルトなどというものにあまりに「本気」になる人間は文壇からもアカデミズムからも受け入れられない。そのような佐藤有文の「物狂い」にも似た本気さを本書の破天荒なパワーから感じ取ってもらいたいものである。

 さて本書は立風書房「ジャガーバックス」の後版「ビックジャガーズ」の一冊である。本書と『ソロモン王の魔法術』は「ビックジャガーズスペシャル」と銘打たれて「ビックジャガーズ」オリジナル版である。それ故この二冊の古書価は高い上、入手は難しい。しかし苦労して探す甲斐のある貴重な本であることを最後に保証しておこう。

 

(黒猫館&黒猫館館長)