現代詩の部屋

 

 

 昭和50年前後からそれまでの荒地・列島・櫂のほぼ3極構造になっていた詩壇に変化が訪れる。 従来の題材・方法に捕らわれない新しいタイプの詩人たちが続々デビューし始めたのだ。これらの詩人たちの詩をここでは便宜的に「現代詩」と呼ぶ。彼らの詩はまだまだ実験的で成熟していないとの見方もできるだろうが、詩の新しい地平を現に切り開いていることも事実である。詩のファンなら彼らの動向に注目しなくてはならない。
 古書的にはまだ古書価が定まっていないこともあって積極的に現代詩を扱おうとする古書店は少ないのでこれらの詩人たちの詩集は入手が難しい。しかしだからこそ蒐集する面白みがあるともいえる。
 現代詩の全貌を解明する仕事は我々コレクターの手に委ねられている。

 

 

 

 

 

 

一色真理

 

H氏賞受賞詩人。「だまし絵」を思い起こさせる詩風に最近は独特の陰影を加えてますます上昇株の新鋭。

 

 

『戦果の無い戦争と水仙色のトーチカ

第一詩集。新世代工房発行。初版1966年4月1日。裸本完本。まず市場には出ない幻の第一詩集。古書価は専門店なら一万5千円前後を覚悟しなくてはならない。


『貧しい血筋』

第二詩集。冬至書房発行。初版1972年9月10日。貼函入完本。ごく稀に見かけるがこれもまず出ない。古書価は五千円程度か?


『純粋病』

第三詩集。詩学社発行。初版1979年7月30日。筒函入完本。H氏賞受賞詩集。よく見かけるので入手は容易。
注意!本書には重版が存在します!



粕谷栄市

詩人・粒来哲蔵の親戚。いわゆる散文詩の書き手で、詩風は粒来に似ているがより怪奇趣味が強い。


『世界の構造』

第一詩集。詩学社発行。初版1971年10月15日。函帯完本。高見順賞受賞。帯文石原吉郎。本書は賞帯のみ確認されている。元帯の有無は現在調査中。まず出ないだろうが出たら安価で入手可能。注意!本書には重版が存在します!


『悪霊』

第二詩集。思潮社発行。初版1989年8月1日。カバ帯完本。歴程賞受賞。元帯のみ確認済み。帯に賞帯が存在するのかどうかは不明。これも最近は入手が難しくなってきた1冊。『季刊幻想文学』で紹介されたこともある。古書価は安い。

 

 

高柳誠

 架空の異世界を濃密な文体で描く詩人。H氏賞受賞詩人。

 

『アリスランド』

第一詩集。沖積舎発行。初版1980年11月20日。カバ完本。古書価は高くないし容易に発見できるだろう。私の手持ち本には識語署名落款が入っている。識語「浮遊していることがアリスランドの第一の存在原理なのだ。」

 

『卵宇宙・水晶宮・博物誌』

第二詩集。湯川書房刊。初版1982年6月30日。函完本。手持ち本は「赤色装丁本」だが著者の意に添わず破棄されたという「青色装丁本」も存在する。古書価は一万円前後か?入手は難しくない。特装本限定30部については現在調査中。H氏賞受賞。

 

 

 

一丸章

日本の中世史の暗部に題材を取り、そこから現代社会の奇怪な歪みを提示するという手法を用いる異色詩人。H氏賞受賞詩人。 

 『天鼓』 

第一詩集。思潮社発行。初版1972年6月1日。カバー完本。はっきり言ってでない。入手はかなり難しいだろう。古書価は15000〜20000円。この詩集は安くつける店はほとんどない。H氏賞受賞。

  

 

小長谷清美

ごく普通の日常の抒情詩を書いているように見せかけて、突然、日常に潜む陥穽を鋭いブラック・ユーモアで抉るという特色を持つ詩人。H氏賞受賞詩人。 

『希望の始まり』

第一詩集。思潮社発行。1970年12月25日限定300部発行。非売品。折込式カバー付き完本。非売品なので出ないのは当然といえるのが本書。しかし根気良く探せば思わぬところで出る可能性はある。

 

『小航海26』

第二詩集。百鬼界発行。1976年8月1日限定350部発行。帯文堀川正美。カバ帯完本。この本の後版であるれんが書房版はどこにでもある本だが百鬼界版はなかなか出ないし、専門店だと古書価が高い。やっかいな本である。読みたいだけの人はれんが書房版を買ってください。それでは満足できない本格派は苦労して探すしかないだろう。