『ビリティスの恋歌』 

 

 

 

ピエール・ルイス原著。吉原幸子訳。PARCO出版刊。初版1982年1月20日。カバ完本。大判。定価4500円。 

 本書は極めて特異な本である。古代ギリシャで実在したという「ビリティス」という女性の同性愛を主軸とした物語詩という体裁をとっているが、これが真っ赤な嘘。すべて著者、ピエール・ルイスの創作である。

 とのっけから夢のないことを書いてしまったが、本書はそんな成立事情などどうでも良いと思わせるのに十分な美しい物語詩だ。古代ギリシャの牧場に住むビリティスが放浪の旅の末、レスポス島に漂着、そして美神アフロディーテに殉ずるまでが極めて耽美的に描かれる。

 本書には生田耕作を始めとする様々な異訳があるが本書はそのなかでもわたしの一番のお気に入りである。ゆったりと組んだ大きな活字、そして東逸子の美しいイラストが花を添える。

 女性の方、そして女性の心を持った男性の方にお薦めしたい美しい書物である。