『淫獄の囚人・痴獄の女神』&『隷属と改造の日々』

 

  

 

斎藤優著。司書房刊。上巻初版2000年4月15日。下巻初版2001年6月15日。裸本刊本。定価両1429円 

 わたしは現在でも毎月3誌ほどSM雑誌を購読しているが10年ほど前『ミストレス』という雑誌でやや毛色の変わった小説を発見した。とにかくいままでのSM小説とは違うなにかがその小説から感じられたのである。それが最終的に『淫獄の囚人・痴獄の女神』としてまとめられる『隷属と改造の日々』だったのである。

 まずこの小説は「読者告白小説」と題して連載された。しかし実話にしてはあまりにも過激すぎる。かくしてこの小説が実話か否か『ミストレス』誌上で論争が巻き起こったほどである。

 確かに内容はかなり過激である。ひとりのM男が乳首刺貫、ペニス増大手術、パイプカット、などなど酷い拷問を加えられたたあげく最後は「奴隷市」に出品されるというのがおおまかな粗筋である。しかも著者・斎藤優の一人称という形で書かれているため異常なほどの臨場感があるのだ。とにかくいままでのM男小説とはスケールが違うのである。

 さらに驚くべきはその分量である。本書は1991年6月25日から2001年6月15日までなんと10年かかって完結したというのだから尋常ではない。著者は「世界一長いマゾ小説になった」と後書きで豪語しているが恐らくそのとおりであろう。

 また筆者の斎藤優は『家畜人ヤプー』を槍玉にあげ「沼氏の作品は奇異なSFにみえてしようがない」と批判を加えている。さて本書と『家畜人ヤプー』のどちらがマゾ小説として上か?それは読者ひとりひとりに判断してもらうしかないであろう。

 もう普通のSM小説では満足できなくなった真のマニア向け小説である。

 

(黒猫館&黒猫館館長)