『殺し蜜狂い蜜』

 

 

赤江瀑著。未来工房刊。昭和53年4月10日限定80部A版発行。天金ちつ入かぶせ函入完本。建石修志銅版画一葉サイン。定価2万円。

 赤江の限定本でわたしの一番お気に入りの本が本書。本の造りが良いのはもちろんだが、ちつの出来は最上級と言ってよかろう。まさしく贅を尽くした逸品である。未来工房主の職人としてのプライドまで感じられるようだ。

 内容は表題作「殺し蜜狂い蜜」に「春喪祭」の2編。どちらもわたしの好きな作品である。「殺し蜜狂い蜜」は推理小説仕立てで二人の男の人格交換の怪が描かれる。とはいってもやはり赤江作品、理に落ちていないラストもわたし好みである。

 「殺し蜜狂い蜜」は第一作品集『獣林寺妖変』のなかの一編。題材は「獣林寺妖変」のほうがハデだが深みという点では「殺し蜜狂い蜜」のほうが上のようである。また「春喪祭」もなかなかの佳品。

 作品のセレクトと見事な装丁が一致した傑作本である。